10年近く腰を据えて海外生活をしていると、嬉しいことに色々な在留邦人の方との出会いがある。日本で大学を休学して短期留学に来る学生、ワーキングホリデービザを使って一時の海外生活を満喫しに来る社会人。私と同じように、こちらで働きながら日々生活している人たち。世界一住みやすい国と言われる日本をわざわざ離れて来るのだから、どこか風変わりな人が多い気がする。

その中に『東日本大震災での日本政府の対応の遅さやその組織の不透明さに危機感を覚えて海外移住を考えた』という人達が驚くことに少なくない。『こんな国にいたら将来何かあった時に自分の身を自分で守れない』『子供の将来が不安だ』。彼らは口を揃えて大体同じような事を言う(もしかしたら震災の後に移住代理店やエージェントが日本脱出をマーケティングのネタにしたのかもしれない)。

理由はどうあれその行動力には目を見張るものがある。私みたいに大学受験に失敗して不貞腐れた生活、勉強も特に気合を入れてしているわけでもなければ、定職にもついていないプー太郎が、ふらっとニュージーランドに遊びに来てそのままの流れで居着いてしまっている場合とは訳が違う。彼らは自分の家庭とそれを取り巻く生活や人間関係そういったものを全部手放した上で、彼らが願うところの『理想の国』での生活を求めて移住してきたのだから。それだけでもう凄いと思う。永住するためにはまず永住権の獲得が必須であって、そう簡単な話でもない。

一方、その行動力を『日本を良くしていくために使おう』とは考えなかったのかなとも思う。日本は民主主義国家であるのだから政府はあくまで私たち国民に代わって政治をしているに過ぎない(と習った)。国民が選んだ政治家でありその政治家が群をなしているのが政府であるはずだから、政府が上手く機能していないのには選んだ国民にも責任がある。政府は国民のための政治を行い、主権を持った国民がその行いを監視する義務がある。

と、誰でも分かっているような綺麗事を言うのは簡単だけど、政府の対応に納得がいかなくて、その自分の考えが世間のマイノリティだった場合、できる事って何があるんだろう。自分の意見を反映してくれそうな党や政治家を見極め、自分の意見が正しいと周りの人たちに訴え、その党が少しでも有利になるような宣伝活動を個人で続けるとか。そんなことをしても正直何かが変わるとは思えないし、そんな労力があるならそれを最大限に使って移住を計画した方がよっぽど現実的。自分が行動しても国は何も変わらないと信じる人たちにとって、民主主義なんていう言葉はまやかしに過ぎず、隣にある某権威主義国家で生活しているのとなんらかわりがないのではないか。

自分は学生が終わってから間もなくして日本を出てしまったため、社会に生きる一人として国や政府との関わりをもつことはあまりなかった。国に何かを期待したこともなかったし何の関心もなかった。きっと日本に愛想をつかして脱出してきた人たちは、始めは国にある程度の期待感を持っていて、けどその期待がことごとく裏切られていろんなことに絶望したあげく、移住を決めたのかもしれない。

自分のルーツである国に誇りを持ち、その国であがきながら生活し、最悪の場合国とともにゆるやかに滅びる道を選ぶのか。それとも世界の中でひとりのジャパニーズとして生きてい行く道を択ぶのか。自分がこれからどうしていきたいかは、今はまだよくわからないけど、外貨で日銭を稼ぎながら日々なんとなくなあなあと暮らしている我が身を振り返ると、前者のような生き方はとってもかっこうがいいなって思う。

日本から脱出するような形でニュージーランドに逃げてきた人達。その中のいち部の人達が今度はニュージーランド政府の個人の自由を極度に制限したコロナ対策やヴァクシン摂取強要に我慢がならず日本帰国を考えているという話を友人から聞いた。

考えるところは違っても、その人たちのように強かに生きたいな。